週刊朝日 2013年9月27日号 名医の最新治療 眼瞼下垂症
2013年9月27日発刊 『週刊朝日』 P77-P79<知って得する!新 名医の最新治療>Vol.296
眼瞼下垂症 <名医のセカンドオピニオン>
水車橋クリニック 眼科 矢部比呂夫医師
手術方法の選択肢が豊富な医師を選んで
眼瞼下垂症の手術は、かつては眼瞼挙筋短縮術が中心だったが、現在は治療が進化し、さまざまな方法がある。どの方法を選択するかは、まぶたが開かなくなっている原因を確定することで決まる。原因に合わせた適切な手術を受けないと、満足のいく治療効果を得られないこともある。東邦大学医療センター大橋病院で眼形成・涙道の専門外来を開設し、現在も同院をはじめ全国6カ所で手術をしている矢部比呂夫医師に手術方法の選択について話を聞いた。
眼瞼下垂症の手術は、どの部分に原因があるか、慎重に診断してから、手術方法を選択する必要があります。原因に合った治療をしないと、まぶたが理想通りに上がらないほか、あと戻りしやすくなることがあるのです。例えば、先天性などでまぶたの筋肉(眼瞼挙筋)が弱くなっていることが原因でまぶたが開きにくくなっているのに、筋肉ではなく腱膜を調整する手術をしてもすぐにあと戻りをして、再手術を繰り返すことになりかねません。眼瞼挙筋に問題がある場合は、額の筋肉(前頭筋)を使ってまぶたを開けやすくする吊り上げ術という手術方法が適しています。
また、ハードコンタクトレンズの長期間装用などによりミューラー筋という筋肉に問題がおきる場合もあります。その際は、ミューラー筋を調節する手術が向いています。
一方、まぶたを上げる筋肉や腱膜に問題があるわけではなく、皮膚だけがゆるんでまぶたを開けづらくなっている場合は、余分な皮膚を切除するだけの手術で十分な効果を得られます。
眼瞼下垂症の手術は病院によって異なりますが、眼科、形成外科、美容外科で実施されています。複数の科にまたがっていることなどから、治療方法の選択には統一された基準がないのが現状です。原因や患者さんの希望に合わせて、さまざまな治療のレパートリーがある医師を選ぶとよいでしょう。
眼瞼下垂症の治療は、術後二重のラインがくっきりするなど、見た目が変化します。術後に「こんな顔になるはずではなかった」と後悔しないためにも、二重のラインをくっきりさせたい、見た目はできるだけ変えたくないといった希望を医師に伝え、事前によく話し合うことが大切です。まぶたが正常に上がっていた頃の自分の写真を医師に見せるのもおすすめです。また、白内障や緑内障の手術後に眼瞼下垂が進行することがあります。とくに緑内障の場合はもともと視野が狭いのに加えて眼瞼下垂があると余計に視野が狭くなりますので手術による改善が望まれます(一部改変)。