NHK テレビテキストきょうの健康 2012年3月号

2012-07-20

NHKテレビテキストきょうの健康

眼科担当の矢部比呂夫の記事が掲載されました。

媒体名   :NHK テレビテキストきょうの健康

掲載号   :2012年3月号

掲載企画名 :読む総合病院 なんでも健康相談

記事タイトル:『「眼瞼下垂」で手術しましたが、再発しました』

掲載ページ :P.139

 

 

「眼瞼(がんけん)下垂」で手術しましたが、再発しました

眼科:矢部比呂夫 (東邦大学准教授)

やべ・ひろお

1951年生まれ。77年東邦大学医学部卒業。専門は眼科学、特に涙道、眼瞼などの眼形成外科

Q.

「左眼瞼下垂」の治療のため、2007年に形成外科で手術を受けました。手術後1か月で再発し、翌年にもう一度手術を受けました。しかし、その後も再発し、医師からは「大腿部の筋膜の移植か、瞼(まぶた)が下がらないように糸で結ぶ手術をするしかない」と言われています。その手術をすると瞼が閉じなくなる可能性があるとのことで不安なため、現在は矯正用のクラッチ眼鏡を使用しています。私の場合、左眼瞼筋板がほとんどないので再発するそうです。何かよい治療法があったら教えてください。●40歳代・女性

 

A.

「眼瞼下垂」の手術は、どの部分を手術対象にするかで4つに大別できます。①弛緩(しかん)した眼瞼皮膚に対する手術、②眼瞼を挙げる最大のパワーの源である眼瞼挙筋からの力が、連続する挙筋腱膜(けんまく)を介して上眼瞼板に効果的に伝導しない場合に対する補強手術、③挙筋腱膜より深部で上眼瞼板に接続するミュラー筋が弱くなった場合の補強手術、④額の前頭筋を使って眼瞼を挙上しやすくする「吊り上げ法」です。通常のコンタクトレンズ長期装用による眼瞼下垂や、加齢に伴い眼瞼下垂を発症する場合は吊り上げ法以外の手術で対応できますが、元来、眼瞼挙筋の力が弱い場合は前頭筋の力で直接上眼瞼板を挙上する吊り上げ法の手術適応となります。眼瞼下垂の手術の際には、どの部分が主な原因であるかを慎重に評価して手術方法を決定する必要があります。ご質問者は最初の手術の時点から眼瞼挙筋の力自体に問題があった可能性があります。

眼瞼を吊り上げる医療材料には多くの種類があり、ナイロン糸やシリコーン製材は安価で入手も容易ですが、これらの素材は毛細血管が侵入することができないので、周囲にバイオフィルムという厚い膜が形成されてしまうために、感染が起こっても白血球などの生体防御機構が機能せずに膿瘍(のうよう)などを起こすことが少なくありません。人工の製材でも多孔(たこう)性のゴアテックス(※)製材などは毛細血管が侵入できるので、まだ前述のようなリスクは少ないのですが、理想的には自分の組織の一部分を取り出して移植する生体材料を用いる方法が望ましいと言えます。生体材料には筋膜や、手首の長掌筋腱(ちょうしょうきんけん)などがありますが、前者は薄いので長期的には吊り上げ効果が低下するおそれがあります。後者は厚さも十分な強固な組織で理想的ですが、手の専門の整形外科医により採取してもらう必要があります。手首の一部を切開しますが、1cmほどの傷痕で目立つものではありません。

これらの吊り上げ材料を眉毛の上から皮下を通して眼瞼に固定します。注意すべき合併症に、眼瞼が挙がりすぎて瞼が閉じなくなる「兎眼(こがん)」がありますが、術中に患者さんが座った状態での眼瞼の高さを確認しながら行うことで、兎眼を回避することができます。眼瞼下垂の手術を多く手がけている眼科医にご相談ください。

※レンズの側にアーチ型のフレームがあり、下がってくる瞼を支えるよう配慮されている

 

きょうの健康掲載ページ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Copyright © 水車橋クリニック All Rights Reserved.