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『私のゴルフ世界紀行』が世田谷区医師会報に掲載されました。PDF(0.99MB)
昨年の手術件数:眼瞼下垂:126件、涙道再建術:119件、その他眼瞼内反など計300件
矢部比呂夫医師の行った眼形成外科手術(眼瞼下垂、眼瞼内反・外反症、涙道手術など)の件数を報告します。これらの件数は水車橋クリニック、東邦大・大橋病院、新潟県上越市石田眼科、新橋八九十会クリニックなど4施設での手術を含めた件数です。
経鼻的な涙嚢鼻腔吻合術は119件、その内、鼻中隔彎曲症との同時手術は16件でした。眼瞼下垂手術は126件、ミュラー筋短縮術が主ですが腱移植による前頭筋吊り上げ術、眉上・眉下切除術を含みます。その他は眼瞼内反症、眼瞼外反症などでした。
特に当科では涙嚢鼻腔吻合術は皮膚切開をしない鼻内視鏡を用いる経鼻的な涙嚢鼻腔吻合術が主で、鼻中隔彎曲症がある場合は鼻中隔矯正術を同時に行って皮膚切開はしない方針で行っています。
水車橋クリニック眼科のインタビュー記事
週刊朝日 2013年9月27日号 名医の最新治療 眼瞼下垂症
2013年9月27日発刊 『週刊朝日』 P77-P79<知って得する!新 名医の最新治療>Vol.296
眼瞼下垂症 <名医のセカンドオピニオン>
水車橋クリニック 眼科 矢部比呂夫医師
手術方法の選択肢が豊富な医師を選んで
眼瞼下垂症の手術は、かつては眼瞼挙筋短縮術が中心だったが、現在は治療が進化し、さまざまな方法がある。どの方法を選択するかは、まぶたが開かなくなっている原因を確定することで決まる。原因に合わせた適切な手術を受けないと、満足のいく治療効果を得られないこともある。東邦大学医療センター大橋病院で眼形成・涙道の専門外来を開設し、現在も同院をはじめ全国6カ所で手術をしている矢部比呂夫医師に手術方法の選択について話を聞いた。
眼瞼下垂症の手術は、どの部分に原因があるか、慎重に診断してから、手術方法を選択する必要があります。原因に合った治療をしないと、まぶたが理想通りに上がらないほか、あと戻りしやすくなることがあるのです。例えば、先天性などでまぶたの筋肉(眼瞼挙筋)が弱くなっていることが原因でまぶたが開きにくくなっているのに、筋肉ではなく腱膜を調整する手術をしてもすぐにあと戻りをして、再手術を繰り返すことになりかねません。眼瞼挙筋に問題がある場合は、額の筋肉(前頭筋)を使ってまぶたを開けやすくする吊り上げ術という手術方法が適しています。
また、ハードコンタクトレンズの長期間装用などによりミューラー筋という筋肉に問題がおきる場合もあります。その際は、ミューラー筋を調節する手術が向いています。
一方、まぶたを上げる筋肉や腱膜に問題があるわけではなく、皮膚だけがゆるんでまぶたを開けづらくなっている場合は、余分な皮膚を切除するだけの手術で十分な効果を得られます。
眼瞼下垂症の手術は病院によって異なりますが、眼科、形成外科、美容外科で実施されています。複数の科にまたがっていることなどから、治療方法の選択には統一された基準がないのが現状です。原因や患者さんの希望に合わせて、さまざまな治療のレパートリーがある医師を選ぶとよいでしょう。
眼瞼下垂症の治療は、術後二重のラインがくっきりするなど、見た目が変化します。術後に「こんな顔になるはずではなかった」と後悔しないためにも、二重のラインをくっきりさせたい、見た目はできるだけ変えたくないといった希望を医師に伝え、事前によく話し合うことが大切です。まぶたが正常に上がっていた頃の自分の写真を医師に見せるのもおすすめです。また、白内障や緑内障の手術後に眼瞼下垂が進行することがあります。とくに緑内障の場合はもともと視野が狭いのに加えて眼瞼下垂があると余計に視野が狭くなりますので手術による改善が望まれます(一部改変)。
NHK テレビテキストきょうの健康 2012年3月号:『眼瞼下垂』
眼科担当の矢部比呂夫の記事が掲載されました。
媒体名 :NHK テレビテキストきょうの健康
掲載号 :2012年3月号
掲載企画名 :読む総合病院 なんでも健康相談
記事タイトル:『「眼瞼下垂」で手術しましたが、再発しました』
掲載ページ :P.139
「眼瞼(がんけん)下垂」で手術しましたが、再発しました
眼科:矢部比呂夫 (東邦大学准教授)
やべ・ひろお
1951年生まれ。77年東邦大学医学部卒業。専門は眼科学、特に涙道、眼瞼などの眼形成外科
Q.
「左眼瞼下垂」の治療のため、2007年に形成外科で手術を受けました。手術後1か月で再発し、翌年にもう一度手術を受けました。しかし、その後も再発し、医師からは「大腿部の筋膜の移植か、瞼(まぶた)が下がらないように糸で結ぶ手術をするしかない」と言われています。その手術をすると瞼が閉じなくなる可能性があるとのことで不安なため、現在は矯正用のクラッチ眼鏡を使用しています。私の場合、左眼瞼筋板がほとんどないので再発するそうです。何かよい治療法があったら教えてください。●40歳代・女性
A.
「眼瞼下垂」の手術は、どの部分を手術対象にするかで4つに大別できます。①弛緩(しかん)した眼瞼皮膚に対する手術、②眼瞼を挙げる最大のパワーの源である眼瞼挙筋からの力が、連続する挙筋腱膜(けんまく)を介して上眼瞼板に効果的に伝導しない場合に対する補強手術、③挙筋腱膜より深部で上眼瞼板に接続するミュラー筋が弱くなった場合の補強手術、④額の前頭筋を使って眼瞼を挙上しやすくする「吊り上げ法」です。通常のコンタクトレンズ長期装用による眼瞼下垂や、加齢に伴い眼瞼下垂を発症する場合は吊り上げ法以外の手術で対応できますが、元来、眼瞼挙筋の力が弱い場合は前頭筋の力で直接上眼瞼板を挙上する吊り上げ法の手術適応となります。眼瞼下垂の手術の際には、どの部分が主な原因であるかを慎重に評価して手術方法を決定する必要があります。ご質問者は最初の手術の時点から眼瞼挙筋の力自体に問題があった可能性があります。
眼瞼を吊り上げる医療材料には多くの種類があり、ナイロン糸やシリコーン製材は安価で入手も容易ですが、これらの素材は毛細血管が侵入することができないので、周囲にバイオフィルムという厚い膜が形成されてしまうために、感染が起こっても白血球などの生体防御機構が機能せずに膿瘍(のうよう)などを起こすことが少なくありません。人工の製材でも多孔(たこう)性のゴアテックス(※)製材などは毛細血管が侵入できるので、まだ前述のようなリスクは少ないのですが、理想的には自分の組織の一部分を取り出して移植する生体材料を用いる方法が望ましいと言えます。生体材料には筋膜や、手首の長掌筋腱(ちょうしょうきんけん)などがありますが、前者は薄いので長期的には吊り上げ効果が低下するおそれがあります。後者は厚さも十分な強固な組織で理想的ですが、手の専門の整形外科医により採取してもらう必要があります。手首の一部を切開しますが、1cmほどの傷痕で目立つものではありません。
これらの吊り上げ材料を眉毛の上から皮下を通して眼瞼に固定します。注意すべき合併症に、眼瞼が挙がりすぎて瞼が閉じなくなる「兎眼(こがん)」がありますが、術中に患者さんが座った状態での眼瞼の高さを確認しながら行うことで、兎眼を回避することができます。眼瞼下垂の手術を多く手がけている眼科医にご相談ください。
※レンズの側にアーチ型のフレームがあり、下がってくる瞼を支えるよう配慮されている
日経ビジネス 2010年3月号
媒体名 :日経ビジネス(日経BP社発行)
掲載号 :2010年3月1日号
掲載企画名 :心と体 診察室
記事タイトル:悲しくないのに涙が出る
掲載ページ :P.82
涙が止まらない流涙症
監修:矢部比呂夫 [東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)眼科准教授]
悲しくもないのに涙があふれて止まらないGさん(51歳)。ハンカチで涙を拭っ
てもおいつかず、視界がぼやけて、書類を読むのもひと苦労している。
涙は、眼の表面を潤して乾燥を防ぐという大きな働きがある。それだけでなく、眼に酸素や栄養分を補給したり、眼についたゴミや雑菌などを洗い流し、異物の侵入から眼を守るといった重要な役割も担っている。眼の表面は涙で覆われており、人が起きている間は常に涙が流れ、1日0.6ml~1mlくらい分泌されるのが通常だ。この涙が少なすぎると「ドライアイ」に、多すぎると「流涙症」となる。
眼表面を潤したあとの涙は、目頭付近にある「涙点」より吸い込まれ、「涙小管」を通って目頭の奥にある「涙のう」にいったんたまり、さらに「鼻涙管」を通って鼻の奥に流れ去る仕組み。この一連の通路を「涙道」という。多くの流涙症の原因は、この涙道の一部が細くなったり閉じたりすることで起こり、涙嚢より上流で閉塞すると流涙症を、下流で閉塞すると流涙症にくわえ、涙のうに膿がたまる「涙嚢炎」を引き起こす。その他、アレルギーや異物の刺激などで涙の分泌が増加して、流涙症になるケースもある。
流涙症になると、正常な視機能があっても、涙で視界がぼやけたり、メガネのレンズがくもったり、目やにがたまりやすいなど生活に支障が出るうえ、涙が止まらないのでハンカチが手放せないなどの不便さを強いられることも。そんなときは、眼科を受診することをおすすめする。
診察では、顕微鏡で眼の表面の様子や涙のたまり具合を観察したあと、涙点から細い管を入れて生理的食塩水を流し、鼻へ正常に流れ込むかを調べる検査も行う。軽度の流涙症なら、眼の知覚を鈍くして涙を出しにくくする点眼薬が処方されるだろうが、涙道の閉塞が強い場合は涙道再建術などで涙の流れを改善する必要になることもある。
ドライアイも誘因のひとつに
涙道閉塞の治療は、場所や閉塞してからの期間によって異なる。早期であれば、「ブジー」という針金状の器具を涙道に通すだけで治ることもある。重症の場合は、閉塞した部分をシリコンチューブで広げて再疎通させる方法や、別に新たな涙道を作るバイパス手術(涙のう鼻腔吻合手術)を行うが、一般的にはバイパス手術のほうが長期成績はよいといわれている。
涙のう鼻腔吻合手術とは、涙のうから隣接する鼻腔に小さい穴を開けて、ここに永久的な新しい涙道を作るというもの。以前からあった、顔面の皮膚を1.5cm程度切開する「鼻外法」と、皮膚は切開せずに鼻から内視鏡を入れて行う「鼻内法」がある。術後の炎症などが軽い鼻内法が最近の主流だ。
8割以上の人が1回の手術で完治するが、アレルギーがあり、鼻炎などを起こしやすい人は、再発する可能性もあるだろう。
パソコンなどで眼を酷使しているビジネスパーソンは、特に流涙症には注意してほしい。パソコンに熱中して、ジーッと眼を見開いた状態が続くことがある。すると眼の表面が乾いて傷がつき、その刺激で反射的に涙の分泌量が増加することがあるからだ。また、ドライアイで眼の表面が傷つき、その刺激で流涙症になる人も少なくない。
予防するためには、意識的にまばたき(瞬目)をしっかりするよう心がけるといい。
まばたきは眼瞼を開閉するごとに新しい涙を眼の表面に拡散させ、古い涙を涙道へ流すというポンプ作用があり、眼表面の潤いを一定に保つために重要なのだ。
ジムなどでプールに入る機会の多い人は、水の中に含まれる塩素の刺激でこの病気になることも。プールから上がったら、点眼薬でよく眼を洗うように習慣づけておこう。
水道水で洗うことの弊害も言われている。
大事なことは目の定期検診をする事で、流涙症に限らず、緑内障などの年齢を重ねるにつれて増えてくる眼の病気に備えることは、今から始めるべきです。
週刊朝日 2005年4月22日号
眼科担当の矢部比呂夫の記事が掲載されました。
媒体名 :週刊朝日
掲載号 :2005年4月22日号
掲載企画名 :名医の最新医療15
記事タイトル:目の病気⑧ 眼科下垂
掲載ページ :P.112-113
加齢のほかコンタクトレンズの長期使用などが影響
状態に応じ、「腱膜固定術」や「ミューラー筋短縮術」で改善
数年前から、まぶたが上がりにくく、いつも眠いような表情になってしまいます。肩こりの原因にもなると聞きました。手術で簡単に治るのでしょうか。(静岡県・女性・45歳)
多い腱膜性の眼瞼下垂頭痛などの随伴症状も
長野県内の看護師A子さん(45)は8年前から鏡を見るたびに、まぶたが下がってきていることが気になっていた。夕方になると、まぶたが重くなり、必死で目を開く。疲れやすく、頭痛と肩こりもひどかった。
悩んでいるうち、眼瞼下垂という病気があることを知り、自分もそうなのではないかと、信州大学医学部附属病院形成外科へ。A子さんを診た同科の松尾清教授は、「腱膜性眼瞼下垂症」と診断した。
まぶたの裏側には、骨格のような役割をする硬い瞼板があり、その全面には腱膜が密着している。腱膜につながっている眼瞼挙筋、ミューラー筋という2種類の筋肉が収縮すると、まぶたが上がる仕組みだ。加齢によって腱膜や筋肉が重力に逆らえなくなったり、目をこすりすぎたりすると、腱膜が緩んで瞼板から外れ、まぶたが下がってくる。
「眼瞼下垂には先天性と後天性のものがあります。後者の多くは腱膜性で、加齢やコンタクトレンズの長期使用、目をこする習慣などが影響して起こります。また、白内障の手術後に起こることもあります」
A子さんは25年間、ハードコンタクトレンズを使用してきた。ソフトよりもハードのコンタクトレンズのほうが腱膜性眼瞼下垂症になりやすい。また、ひどい花粉症で、よく目をこすっていた。
アトピー性皮膚炎やアレルギー性結膜炎がある人、よく泣く人、アイメークをしている人などもまぶたをこする頻度が高いため、腱膜性眼瞼下垂症になる可能性が高いという。
このような眼瞼下垂症になると、目を開けづらいといった機能面や、老けて見えるという美容面の問題のほか、いろいろな随伴症状が出ることがわかっている。
たとえば、まぶたを上げて目を開くとき、前頭筋(額の筋肉)を使って眉毛を上げなければならない。このため、前頭筋に常に力が入った状態となり、緊張型頭痛を起こしやすい。また、前頭筋を収縮させる際、肩や腰の筋肉にも力が入り、肩こりや腰痛にもなる。
さらに、眼瞼挙筋を必死に収縮させることで筋肉が疲れ、目の奥が痛む。同時に、ミューラー筋を収縮させるために交感神経はいつも緊張した状態に。すると冷え性、便秘、手のひらの発汗、光をまぶしく感じる症状なども出やすくなる。
松尾教授が診たところ、A子さんは必死にまぶたを上げていたため、いつも歯をくいしばり、舌で前歯を押す癖もついていた。それでも、まぶたは正常範囲まで上がらず、瞳孔の上部は隠れていた。
そこで、外れた腱膜を元に戻す「腱膜固定術」という手術をすることにした。まぶたを切開して、腱膜の一部である眼窩(がんか)隔膜を瞼板に縫いつけるものだ。二重まぶたにしたい人は、これを皮膚にも縫いつける(こうすると手術の傷跡が二重のライン内に入って目立たなくなるメリットも)。
手術は約1時間で終了するが、同病院では1、2日入院してもらう。
A子さんは術後、顔じゅうの筋肉に力を入れなくてすむようになり、表情が柔和になった。また、以前は不安や緊張を感じやすかったが、それも軽減した。
「腱膜性眼瞼下垂症の人は不安や緊張を過度に感じる傾向があります。まぶたの動きと脳内物質がどのように関係しているのか、現在、研究中です」
ところで、腱膜性眼瞼下垂症になる前に、次の二つの病態がある。
①腱膜分離症=腱膜が瞼板から外れている状態。あまり努力しなくても、まぶたは上がり、随伴症状もない
②腱膜すべり症=瞼板から外れた腱膜がすべり落ちている状態。努力しないと、まぶたは上がらず、さまざまな症状がでる
そして、腱膜性眼瞼下垂症になると、努力しても、まぶたが思うように上がらず、瞳孔の上部が隠れてしまう。治療では、腱膜すべり症から健康保険が適用される。
「高齢者のほとんどは腱膜が瞼板から外れている状態です。若い人でも目を酷使すると症状が出やすく、多くの人に腱膜すべり症が疑われます。放っておくと進行するので、この段階での手術をお勧めします。囲碁、編み物、ガーデニングなど、下を向くことが多い趣味を持っていると、症状は軽くなります」
松尾教授によると、次の兆候がある人は腱膜すべり症の可能性があり、要注意だという。
▽二重の幅が広くなった
▽目の上がくぼんできた
▽正面を見ているときでも目の下部の白目が見える
▽額に横ジワができた
▽朝起きたとき、なかなかまぶたが開かない
▽夕方になると、まぶたが疲れて開かない
▽食後や飲酒後にまぶたが重い
軽度や中程度のものに簡便で有効な手段
眼瞼下垂の手術では、「眼瞼挙筋短縮術」という手術が主流だった(前述の腱膜固定術は主に形成外科などで行われている)。これは、眼瞼挙筋を短くして瞼板に縫いつける方法だ。現在も先天性で重度の眼瞼下垂に用いられている。
だが、まぶた全体のカーブが変わり、手術前と顔が違ったり、瞳の動きに伴うまぶたの自然な動きが損なわれたりする短所があった。
東京都内のB子さん(73)は東邦大学医学部付属大橋病院の眼科で白内障の手術を受けたあと、まぶたが下がってきた。そこで同じ眼科の矢部比呂夫助教授が診たところ、右の瞳は半分くらいまで隠れていた。
そこで矢部助教授は、B子さんに交感神経を刺激する塩酸アプラクロニジン(商品名アイオピジン)を点眼した。すると眉毛を上げなくても、まぶたを正常の高さまで上げることができた。
矢部助教授は言う。「この点眼薬で交感神経を刺激し、まぶたを正常に開くことが確認できれば、ミューラー筋の障害が眼瞼下垂の原因になっているという判断がつきます」
そこで矢部助教授は、B子さんに「ミューラー筋短縮術」という手術をした。眼瞼下垂の手術を積極的に実施している米国では、9割がこの手術だという。大きな眼瞼挙筋を短縮するより、その働きを補助しているミューラー筋を短縮するので、そのほうが手術も簡単で、術後のトラブルも少ない。
日本では、この手術を顕微鏡下で行い、精度を高めるようにしている。矢部助教授は、顕微鏡下でミューラー筋をつかむのに便利な、ワニの口の形に似た特殊な鉗子(かんし)を開発した。
「軽度から中程度の眼瞼下垂なら、ミューラー筋を短縮するだけでも十分に改善します」
手術では、眼瞼下垂が軽度の場合は眼瞼裏の結膜を切開、また、中程度の場合は瞼板の皮膚を切開し、ミューラー筋を鉗子ではさんで適宜、短縮する。日帰り手術が可能だ。
術後、B子さんの右まぶたはしっかり開くようになった。が、今度は左まぶたの下垂も気になり、その手術を検討中だという。
(中寺暁子、堀口明男)
信州大学医学部附属病院 形成外科 松尾清教授
東邦大学医学部付属大橋病院 眼科 矢部比呂夫助教授
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